前の記事ではサヤ取りとサヤすべり取りの手法について簡単に説明しました。それぞれ単体の運用においてもその有効性は高いですが、2つの手法を組み合わせることによりさらに安定した収益を期待することができます。それはコンタンゴ銘柄と相関性のある銘柄をペアにしてサヤ取りを実践することです。コンタンゴ銘柄を空売りすることによるサヤすべりの収益と相関性のあるもう一方の銘柄とのサヤの変動による収益、さらにその銘柄が配当性のあるものであれば3つの収益を得る機会があるからです。
それでは具体的にどのような銘柄を採用すればよいのかということをこれから説明します。一つめのコンタンゴ銘柄を決めます。代表的なもので、原油や天然ガス、穀物(大豆やコーン)、貴金属などの商品相場が対象となります。特殊なものとして恐怖指数とされるVIX指数もコンタンゴ化された銘柄であるといえます。次にペアとなるもう一方の銘柄を決めます。相関性のあるものを探すのが難しいところですが、ここで一つの例として株式の個別銘柄に注目します。商品相場に影響を受けやすい銘柄として商社株やエネルギー関連の会社があります。これらの企業は穀物や石油などを在庫として取り扱っているので、会社の株価は商品相場と正の相関になる傾向があります。もちろん事業の業績もありますので全部が影響するものではありませんが、選択肢としては次のような理由からメリットは大きいと思います。それは商社、エネルギー関連の会社は配当性向が高いからです。これらの会社の株はおよそ4パーセントくらいの配当利回りがありますので、現物株式を保有するだけでも配当収入が発生します。
サヤ取りとして運用するには商社、エネルギー関連の株式(〇〇商事や〇〇エネルギーなど)を買って、穀物や石油など相関性のあるコンタンゴ銘柄を空売りすればこの戦略の形が出来上がります。
実践では次のような手順で仕掛けて行きます。
始めにサヤ取り、サヤすべり取りの対象とする2つ銘柄を決定します。一つめはサヤすべり取り用の銘柄としてコンタンゴ銘柄を採択する。最初は原油か穀物あたりが入りやすいです。二つ目は相関性のある銘柄として商社株またはエネルギー関連の会社の株を選びます。
選定にあたり下記4つの条件をチェックしておきます。
1.相関係数が高い。
2.直近期間のサヤ値データが正規分布に近似している。
3.商品相場はコンタンゴの状態であることが多い。
4.株式の配当利回りが3~4%程度ある。
1と2はサヤ取りに関する条件で、3と4はサヤすべり取りに関する条件になります。(厳密には4の配当利回りはサヤすべり取りとは違いますが特性がにているので同様の扱いとしています)
相関係数とか正規分布などという用語がありますが、統計学でよく使われるものです。簡単に説明すると相関係数は2つのデータが同じ方向に動く度合いを数値的に表したもので、値が-1から+1の間を取ります。今回の例で言うと商品相場の価格が上がると商社株なども上がる傾向にあるので正の相関になりやすく、逆に一方が上がってもう一方が下がる傾向にあるものを負の相関もしくは逆相関があると言います。正の相関が強いと相関係数は+1に近づき、逆に負の相関が強いと相関係数は-1に近づきます。
図 相関
正規分布についてはあるデータの集まりの平均値±標準偏差値の区間に全体の約66パーセントのデータが入るとされています。
サヤ取りをするにあたって相関係数だけで銘柄選定するのはおすすめできません。分布の状態を確認しておくことも重要です。相関係数は2つデータの動きの方向性だけ数値に表しているものですので、実際にサヤが急に拡大したり縮小する局面においても動く方向が同じであれば高い相関となります。
図 サヤ値分布
サヤ取りを仕掛ける方法としては平均±標準偏差値の外側にサヤ値が外れたときサヤの縮小を狙ってエントリーします。仕掛けたサヤ取りのポジションがサヤ値の平均値に戻したときにサヤ取りポジションを決済して利益を確定させます。なかなかサヤ値が戻らない場合もありますが3と4のサヤすべりの効果がありますので基本的に放置して中長期的な投資のスタンスで構えていればよいと思います。ただしコンタンゴ状態が解消された。相関性がなくなった。サヤ値の分布がいちじるしく正規分布から偏りはじめた。などのような状態になった場合は損益に関わらず一旦ポジションを解消して様子をみることを推奨します。
以上のような流れとなりましたがサヤ取りの組み合わせは多種多様ですので組み合わせをいろいろと検証してみると自分に合う銘柄を発見できると思います。銘柄選定、検証手法などまだまだ特筆することはありますが、また別にかたちで公開することを検討しています
参考文献

