サヤ(鞘)とは2つの商品価格の差のことです。例えば株式で銘柄Aと銘柄Bの株価の価格差、商品先物でガソリン7月限とガソリン8月限の価格差等が挙げられます。
このサヤの拡大と縮小を狙って取引する方法をサヤ取りといい、このサヤ取りにもいろいろな種類があります。実際に現物を取引する現物サヤ取り、株式個別銘柄で信用取引を利用するもの、先物市場の限月制を利用するものなどがあります。私が実施しているサヤ取りは同銘柄で先物の限月を利用したものと、為替相場やCFD取引におけるサヤ取りなど、差金決済する両外しサヤ取りのみを対象としています。
サヤ取りは売りと買い両方同時に仕掛けまた手仕舞いして、価格差の拡大と縮小を取ることで損益を確定します。
例えば、ガソリン8月限とガソリン10月限で、期近の8月限を買い、期先の10月限を売ります。このとき仕掛け時の10月限−8月限の値が、手仕舞い時10月限−8月限の値より小さくなれば利益になります。
このように相関関係の高いのある2つの銘柄をそれぞれ売りと買い建てることにより相場の上げ下げに直接影響を受けることがなく、サヤの変動だけが損益になる取引になります。これがローリスクでミドルリターンが期待できる手法といわれる理由です。
一般的には以下のようなサヤ取りがあります。
■ スプレッド
先物取引で同銘柄異限月のサヤ取りです。
例 東京ガソリン10月限と東京ガソリン8月限のセット
■ ストラドル
異銘柄のサヤ取りです。
例 東京ガソリン10月限と東京灯油10月限のセット
■ アービトラージ
異市場間のサヤ取りです
例 東京ガソリン8月限と中部ガソリン8月限のセット
サヤ取りを実行するためには前提条件がいくつかあります。
条件1 2つの商品に相関関係があること
これは相場において、一方が上がれば他方も上がる一方が下がれば他方も下がる関係が成り立っていることです。
その相関関係の強さを表す統計的指標として相関係数というものがあります。
サヤ取りを実践する場合この相関係数が80%以上の組み合わせが好ましいと思われます。
条件2 サヤに周期性があること
サヤの拡大と縮小が周期的動くものは仕掛けやすいものです。
ただし周期が崩れたりすることはたびたび起こりますので、その時は速やかに撤退するか休みを入れるのがポイントです。
条件3 サヤの時系列データが確立分布に従う
これは過去の時系列データの集まりが、主に正規分布に従っていることです。
正規分布とは平均と標準偏差から成り立つ分布で、平均値付近のデータ数が一番大きくなり、平均値から左右対称で乖離するにつれデータの数が小さくなる分布です。
これも条件2と同様に確立分布に大きな変動があった時は撤退か休みを入れることです。
条件4 出来高の小さい銘柄はやらない
これは基本的なことですが、出来高が小さいと少ない注文でも値段が動いてしまうことがあり、不利なポジションで約定したりすることがあります。
条件5 売りと買いの比率は揃える
サヤ取りの場合売りと買いのポジションの比率そろえることが好ましいです。同銘柄異限月の場合は証拠金、倍率とも同じなので特に意識する必要はなく1対1の割合で建玉すればよいのですが、異銘柄のサヤ取りの場合は倍率の大きい方にポジションに合わせなければなりません。
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